Otsuma Ranzan Junior and Senior High School

ウェブ配信による始業式を行いました。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、生徒の皆さんの安心安全を確保のため、当初予定していた令和2年度の始業式をウェブ配信にて行いました。

コロナウィルスの感染が収束し、一日でも早く元気な皆さんに会えることを教職員一同、願っています。皆さんも体調にはくれぐれも気をつけてください。

令和2年度 始業式(ウェブ配信)
井上校長挨拶

人は何のために学ぶのか?

皆さん、おはようございます。

すでに校長交代については、真下前校長先生から皆さんのもとに連絡がいっていると思いますが、真下前校長先生の後任として校長を勤めます井上です。これから校長として、本校の運営・改革に力を尽くしていきますので、よろしくお願いします。

私は、本日2つの話をして、始業式の挨拶とします。

1つめです。

新型コロナウィルスの感染が拡大し、学校は2月の末から休校状態に陥っています。また、本日、関東の1都3県に緊急事態宣言が発令されることになりました。イタリアの例を見るまでもなく、この新型コロナウィルスの感染がさらに拡大すれば日本中で医療崩壊がおき、命の選別までせざるを得ない悲惨な状況に陥る危険性があります。皆さんもこうした危機的状況を理解し、どのような行動をとるべきか、しっかりと考え行動してください。

学校は、皆さんの健康と安全を守ることを第一と考えています。

東京から通学する生徒もいます。また通学する生徒は県内ほぼ全域に渡っています。そうした生徒が通学中に感染してしまう可能性を一番心配しています。また、6便のスクールバスは、感染拡大の一番の原因になりうるいわゆる「三密」の状態を長時間強いることになります。私は、皆さんがこの新型コロナウィルスに感染することも防ぎたいし、皆さんがキャリアーとなって感染を拡大させてしまう事も防ぎたいと思っています。こうした背景から、県に先駆け学校を5月のGW明けまで休校とすると決定しました。ご理解ください。

次に優先すべきことは皆さんの学習をいかに保証していくかです。

すでに、クラッシーやロイロを使って課題を配信したりしながら、学習活動を支援してきました。今後もそうした機器を使って課題配信を継続する一方で、さらに来週以降からは、遠隔授業を実施していきますので、皆さんは必ず受講するようにしてください。また、学校再開後には必ず確認テストを実施しますし、理解が不十分な生徒には補習を行う予定です。

2つめの話をします。本日の本題です。

皆さんも長い休みの中で、勉強に対するモチべーションが高まらず、鬱々した日々を過ごしているのではないかと思います。

そんな中、少し堅苦しくなるかとは思いますが、「人はなぜ勉強するのか?」という話をします。

勉強についての私の考えです。皆さんも本日の話を基にして自分なりに勉強の意義を考えてみてください。私にとって約12、3分の授業だと思って全力を尽くしますが、十分に真意を伝えきれないかもしれません。でも、話の中の一言でも皆さんの心に響いてくれれば良いと思っています。

皆さんはオームの法則は知っていますね。そのオームの話をしてから本題に入ります。

オームは、ドイツで生まれました。小さい頃から将来は物理の研究者となりたいと思っていました。しかし経済的に恵まれなかったために、大学卒業後すぐに働かざるをえませんでした。そこで彼は憧れていた研究職の道をあきらめ高校の教師として働き始めたのです。

高校教師になってもオームは自分の夢をあきらめきれませんでした。彼は高校で数学と物理学を教えるかたわら、授業が終わると一人で物理実験に専念する生活を何年も続けます。そしてようやく研究の成果が実り、1827年に「オームの法則」を発表するに至りました。

オームはこの論文が学会で認められ、自分も憧れの大学教授になれるのではないかと期待しました。しかし、当時の学会はオームに対してとても冷たく接します。「高校教師風情が、こんな研究をするなんてとんでもない。」と批判し、ついには高校教師の職までも奪ってしまいます。今ならオームの発見は小学生でも簡単に証明できる法則ですが、当時の実験環境では誰も確かめることができなかったのです。失意の中、オームはドイツを追われ、生きるために隣の国の工業高校の一教師として働かざるをえませんでした。

それから約25年後、ようやくオームの業績は認められ、ミュンヘン大学の教授として迎えられます。オーム63歳のことでした。しかし長く苦難に満ちた生活が彼の体をむしばんでいました。教授になってわずか2年後オームは65歳で永眠します。

ドイツ物理学会は、自分たちが彼に対して取った行いを深く反省し、自分たちの過ちを忘れないために、そして何よりも彼の偉大な功績を後世まで称えるために、電気抵抗の単位に彼の名前であるオームを使うことを、国際学会の場で提案します。

中学校の教科書では、「抵抗に流れる電流は、それに加えた電圧に比例する。この関係をオームの法則という。」と書かれています。そして、オームが命を賭けて残した関係式は、「E=RI」のたった1行です。でも、このたった1行にオームの燃えるような熱い思いが凝縮されているのです。このように、これまで人類が何千年もかけて創り上げてきた熱い思いと数限りない失敗の記録がたくさん書き込められているのが皆さんの教科書です。

皆さんはそんな教科書を使って、先人達の熱い思いや失敗を学んでいるのです。

また、人類の歴史は、不可能を可能にしてきた歴史でもあると言っても過言ではありません。つまり教科書には、人類にとって実現はとうてい不可能だと思われていた夢が、実現され現実のものとなっていくプロセスが書かれているのです。

さて今日の話をまとめます。皆さんはなぜ学び続けなければいけないのでしょうか?

私は、勉強の意義は3つあると思っています。

勉強は、自分の栄達や人生の成功のためだけにあるわけではありません。

勉強とは、今までこの地球上に存在した先人達の経験や発見、そして失敗によって得られた知識や知恵を学んで、

①自分の世代で同じ失敗を繰り返さないこと。

②先人達から引き継いだ知識や知恵を応用して自分の使命に活用すること。

③次の世代に新たな知識や知恵を追加して伝えることだと思うのです。

自らの栄達や成功は、その結果として付随してくるものであり、その本質ではありません。

家庭で勉強しなければならない状態にある皆さんは、なぜ勉強するのか目的がわからずに、勉強に気持ちが入らない事が多々あると思います。でも、先ほど話した勉強の意味を皆さんもしっかりと考えてみてください。そして自分なりに勉強の目的を理解することができれば、苦痛でしかない勉強も楽しくはならないとは思いますが、やらなければいけないと気持ちを切り替えることができるのではないでしょうか。

本校の学祖、大妻コタカ先生の言葉で、本校の建学の精神でもある「学芸を修めて、人類のために」と言う言葉は、まさにこの勉強の目的を明確に示しています。皆さんは、自分のためだけに勉強をするわけではありません。勉強することで自分に与えられた使命を自覚し社会に貢献するために勉強するのです

そのために、私は皆さんに望むことがあります。「自学自習力」を身に付けて下さい。新型コロナウィルス感染防止で、期せずして休校状態になり、皆さんは自学自習をせざるを得なくなっています。でも、こうした機会を最大に活用して「自学自習力」を身につけてください。勉強も楽しくなるはずですし、皆さんの力も飛躍的に伸びていくはずです。「自学自習」しながら悩み、考えてください。それでも、どうしてもわからない事があったら先生方に質問してください。それが真の勉強なのです。

この1月間、私は皆さんの学習時間、皆さんと先生方とのコミュニケーションをざっとではありますが、全て確認しています。高校3年生を中心に、本当によく勉強していて、感心する生徒もかなりの数います。一方で、この1月間全く勉強していない生徒も少なくありません。こうした日頃の努力の差は、後々大きくなって取り返しがつかなくなってしまいます。

学習の「習」の字は、巣立ちを前にして雛が一生懸命に翼を動かし、羽ばたきの練習をしている姿を象形しているといいます。つまり、学問は自分でやらなければ学習とは言わないのです。

そして、教員の役割は、一生懸命に悩み苦しんでいる君たちに解決のヒントを与え、自己解決の喜びを皆さんに与えることだと私は思っています。明日から、苦しいかもしれませんが、先ずは自学自習の一歩を踏み出してください。