卒業生のみなさん、卒業おめでとう。
この卒業の式にあたり、これまでのみなさんの努力と頑張りを、心から讃えたいと思います。また、この日までお嬢様を愛し育ててこられた保護者の皆様にも、ここに深く敬意を表したいと存じます。
人類がその英知を結集しても、いまだにその本当の姿を解明できない新型コロナウイルスの感染拡大で、2月29日からの休校。そして今日のこの卒業式も、感染防止のため、時間短縮、参加者制限の上で、卒業生の皆さんと、私たち教職員だけで開催することにしました。保護者の皆様方や、あなたたちの後輩の在校生たちの参列なしでこの式を挙行することは、本当に辛いことですが、私たちも精一杯の準備をして今日を迎えました。
担任の二人の先生は、あなたたちの写真を一人一人学年順に並べ、「こんなに成長したんだ」と言いながらエントランスの飾りを用意しました。学年主任の先生、中学校の他の先生方も、式場準備の終わった昨日、特別に華やかな会場作りをしてくれました。
あと2日、20日には、熊谷気象台からさくらの開花予想が出ています。花咲き誇る春がもうやってきている今日、あなたたち中学3年生の中学校課程修了と、高校への進級を祝う、卒業証書授与式を、小さいけれど心からお祝いする卒業式にしたいと思います。
いつもみてたからわかるよ
うまくいかないこともあったけれど
どんな時でも前を向いている
そんな君みたいになりたくて
まっすぐ ただまっすぐに
私が前だけをみていられるのは
そこに君の背中が見えるから
いつも輝いているキミが見えるから
君がまっすぐ ただまっすぐに
飛ぼうとしている姿みてると
時々不安になるけれど
いつまでも胸張って君の隣にいたいから
君のやつほど立派じゃない羽
精一杯広げて自分の空を探すよ
(By SHISYAMO)
8月のNHK音楽コンクール、ソニックの大ホールであなたたちが歌った課題曲「君の隣にいたいから」の歌詞は、今日のあなたたちへ、贈る言葉にぴったりです。
まっすぐ ただまっすぐに 活動しているあなたたちでした。
そう
大妻嵐山中学校を元気に走り続けてきたあなたたちを心から誇りに思います。
あなたたちが入学する前、先生方と、これから大妻嵐山中学校をどんな学校生活が送れる学校にしていくのかを真剣に話し合いました。その結論は「中学生が、どんどん前に進んで何にでも挑戦できることが当たり前の学校に」
藤色のスカーフを襟に巻いた新しいセーラー服を着た中学生のあなたたちが、先輩に続いて、入学してきた時、先生方は本当にあなたたちの成長に夢を託したのです。今、大妻嵐山の中学生たちがなんと元気なことか、あなたたちは私たちの夢を実現してくれたのだと思います。
高校生に混じったビブリオバトルへの挑戦、スクラッチを使いこなし計算値を使って見事美しい花火のような軌跡を描き出したプログラミング、体育祭のダンス、中学校生徒会の新しい取り組み、マラソン大会。そしてお琴も、サダコ先生との論語の素読も。理科卒業研究発表・ポスターセッションはつくばサイエンスエッジに発展するはずでした。放課後の学習道場、数学の基礎を学ぶために導入したQunebaもにどんどん取り組む姿、美術部・バレー部の活躍、どれも本当に晴らしい。
そしてイングリッシュフェスティバル。
中1のアリとキリギリス。頭につけた触覚の可愛かったこと、中2のアナと雪の女王での成長ぶり、一つ年上の先輩たちが演じたイクバルの人生の創作劇を引き継いだ、大妻コタカ先生の挑戦の人生を描いた創作英語劇。
大妻嵐山の英語劇の伝統を不動なものとしてくれました。後輩たちはいつかあなたたちのようになる、と憧れを思っています。
また去年の5月、あなたたちの仲間の2人がロータリークラブの交換留学選考に応募し、海外留学のためのセレクションを突破しました。そしてもう一人も海外を目指します。日本とは異なる文化の国へ一人でとびこんで異文化を理解しながら留学生活を送る勇気と決意は眼を見張る思いです。
2年生の1学期、サンフランシスコの学校に転校した同級生も含め、あなたたちの世界を見る目がどんどん広がるのを楽しみにしていました。
中学校の義務教育課程修了に当たって、今日はあなたたちに3つの言葉を送ります
1つ目は 感謝すること
これまで育ててくださったご家族の皆さんの愛への感謝
先生方への感謝
あなた方の活動や学びを助けてくださった全ての皆さんへの感謝
教科書や本など先人が残してくれた、あなたたちがこれから知るであろう文化や知への感謝
自然がもたらす気候変動や新型ウイルスは辛いけれど、でも私たちをいかす偉大な自然の力への感謝
2つ目は、多様性へのリスペクト
自分とは違った物、文化、考え方を、人々の生活を理解するためのバックグランドは「自分を知ること」
自分はどう考えるのか、自分の意見をしっかり持つこと、そのために現状分析したり課題を見つけたりできる力を持つこと。
そのために、これまで繰り返してあなたたちに話してきた「知ること、考えること、行動すること」を忘れずに
3つ目は、好奇心を持つこと
これからの高校での学びでは、面白くておもしろくてたまらないものを見つける好奇心を持って学んでほしい
好奇心こそがあなたを成長させる基になる
保護者の皆様
この春から高校生になる娘たちとの接し方、距離感についてお願いがございます。是非「高校生の親として、保護者から自立支援者」となっていただきたいのです。
いつか、お嬢さんたちは、必ず皆様の手から離れて自分で生きていく、自立の時がやってまいります。義務教育まで、「守り育てる」ことから、一人で生き抜く力を獲得していく高校時代にするための「少しづつの手放し」と「信じて手を出さずに応援」する「自立支援者」になっていただきたいのです。
世界経済フォーラムのジェンダーリポートが示すように、まだまだ日本では、女性が専門的な力を持って活躍する場、環境が厳しい状況です。それでも、今の日本の現状、これからの時代を予測してみれば、女性が自分自身の力で社会に貢献できる力をもたなければ、幸せな未来を築いていくことはできないのだと思います。お嬢様たちにとって、次の高校生活こそがそのための本当の土台を積み上げる時期です。自ら学び、友と共に学ぶ、自立学習者として成長させたいと思います。
まさに皆様も、私たち教職員も高校生活では彼女たちがどんな時代も、どんな環境でも、どんな課題でも自分で乗り切っていける力をつけてまいりましょう。
お嬢様たちは、これまでも色々なことに0から挑戦して、やり遂げてきました。もう十分にその力を持っていると確信しています。
引き続き、同じ目的を持ったチームとしてのご理解ご支援ご協力をお願いいたします。
最後に卒業生の皆さん
この国に生きる私たちは、3月11日で9年になる東日本大震災、津波と原発の大事故、それ以後も。地震や水害、など次々に襲いかかる困難や深い悲しみと苦しみに直面しました。そしてこの新型コロナウイルス感染拡大。
被災した方々の困難や苦しみ、大きな喪失感、私たちの困難はまだまだ続いていますが、困難な中で生きる人々、そして私たち自身が、これからの人生の未来図を描き直す支えになるためにも、皆さんが人々の生き様から多くのことを学び取り、自ら動き、そして伸びやかに、新しい日本を作り支えていく力の一つとなってくれることを願っています。
3年間共に過ごした仲間たちのことや時間は一生大切な物としてどうぞ忘れずに。
みなさんの充実した高校生活を心からお祈りし、私の式辞といたします。
まっすぐ ただまっすぐに 行きましょう
令和2年3月18日
大妻嵐山中学校高等学校長 真下峯子